「〇〇字以内で書きなさい」という国語の問題。この手の問題が苦手な子はとても多い。「書く力」をつけるための学習だがこの授業の交流部分では「話す力」も育つ様子が見られた。「聞く」「書く」「話す」はお互いに影響しながら育った行くことがよくわかる。
文章を要約したり組み立てる力をつけるための授業「桃太郎問題」のTCから考えてみよう。
あらすじを書く方法
T: 今から桃太郎問題という問題をします。みんながよく知っている桃太郎のお話のあらすじを次のような方法で書きましょう。
方法
- 桃太郎のお話を起承転結に分ける。(頭の中で)
- 起承転結のそれぞれを一文にまとめる。
- それぞれ次のキーワードを入れる。
起 「愛情」
承 「決意」
転 「家来」
結 「個性」
この「桃太郎問題」は話の骨組みを捉えられるかがポイントとなる。
5年生では起承転結は学習済みであるが導入で少し復習しておく。
キーワードは様々な言葉があるが一つぐらい具体的なワードを入れておくと取り組みやすい。
ここでは 転 を「家来」としている。
自力解決から交流へ
T: まずは自分一人でやってみよう。何か質問はありますか?
C: どこからやってもいいんですか?
T: そうですね。でもまずはだいたい頭の中でお話を4つに分けてから取り組みましょう。
C: 個性ってどういう意味ですか?
T: わからない言葉は辞書で調べましょう。
物語の文章表現は書籍によって様々であるが大まかな四分割は次のようになる。
- 昔々おじいさんとおばあさんが桃から生まれた赤子を桃太郎と名付けた。2人は桃太郎を強くたくましく育てる。
- 村では毎年鬼が来て盗みや悪さをして村人を苦しめていた。成長した桃太郎は村で暴れていた鬼を退治しようと鬼ヶ島へ行くことを決める。
- 桃太郎は鬼退治に向かう前に無事を祈るおばあさんから手作りのきびだんごを渡される。鬼ヶ島に向かう道中おばあさんに作ってもらったきびだんごと引き換えに猿・雉・犬を家来にする。
- 桃太郎と家来たちはその個性を生かし協力して鬼ヶ島の鬼たちと戦う。その結果勝利し盗まれた宝を村に持って帰る。
しかし子どもたちにはこれを示さずにまずはひとりで考えさせる。
時間15分
↓
グループで交流する。 15分
お互いの疑問やつまづきを交流する。
↓
もう一度一人で文章を仕上げる。
【授業の考察C1】
ここでは2人の子ども(C1 C2)の活動の様子と文章を紹介する。
C1の様子
C1は起から順番に比較的スラスラと起承転まで書けた子である。
この子は「個性」の意味を質問した子である。
先生の指示通り辞書で「個性」を引いたがそれでも「個性」と「結」の部分の関係がよくわからなかった。しかしC1はグループの交流で桃太郎における「個性」の意味をはっきりさせることができた。その意味でグループ交流は価値があった。
「個性」をキーワードに決めたのは先生のこだわりだった。鬼に勝利したのは、桃太郎と家来たちがそれぞれの個性を発揮したからだと表現させたかったからだ。
C1の文章
起 川上からどんぶらこと流れてきた桃の中から
生まれた桃太郎は愛情いっぱいに育てられました。
承 桃太郎はすくすくと育ち鬼ヶ島に鬼退治に行くことを
決意しました。
転 鬼ヶ島に行く途中に犬と猿と記事を家来にし
代わりにきびだんごをあげました。
結 鬼ヶ島での戦いはそれぞれの個性を出し
鬼を退治することができました。
【 授業の考察C2】
C2の様子
C2はまずは転 が簡単だと言って転から書いた。
転 雉と犬と猿を家来にして鬼ヶ島で戦いました。
次に結を書いた。
結 勝因は家来が個性を出したからだ。
(空を飛べる雉・ひっかく猿・噛む犬)
次に起承を書いた。
起 愛情を込めて作ったきびだんごを食べました。
承 鬼を倒すことを決意しました。
並べるとこのようになる。
C2の文章 その1
起 愛情を込めて作ったきびだんごを食べました。
承 鬼を倒すことを決意しました。
転 雉と犬と猿を家来にして鬼ヶ島で戦いました。
結 勝因は、空を飛べる雉、ひっかく猿、噛む犬で
家来が個性を出した。
C2は「なんか変だ」と言ってグループ交流で友だちに見せていた。みんなから
「誰が」(主語)がないよ・・と言われ次のように修正した。
C2の文章 その2
起 おばあさんが愛情を込めて作った
きびだんごを桃太郎が食べました。
承 桃太郎が鬼を倒すことを決意しました。
転 桃太郎は雉と犬と猿を家来にして鬼ヶ島で戦いました。
結 桃太郎の勝因は、空を飛べる雉、ひっかく猿、噛む犬で
家来が個性を出したからです。
その後また「なんか変だ」と言って起を書き直す。3回目の分は次の通り。
C2の文章 その3
起 おばあさんが愛情を込めて作ったきびだんごを
桃太郎が見つけた動物たちにあげました。
承 桃太郎が鬼を倒すことを決意しました。
転 桃太郎は雉と犬と猿を家来にして鬼ヶ島で戦いました。
結 桃太郎の勝因は、空を飛べる雉、ひっかく猿、噛む犬で
家来が個性を出したからです。
???
「ちがうちがう・・わかった!きびだんごに
こだわりすぎた!」と言って
次のように書き直して完成した。
C2の文章 その4
起 おじいさんとおばあさんが愛情を込めて桃太郎を育てました。
承 桃太郎は鬼ヶ島の鬼を倒すことを決意しました。
転 桃太郎は雉と犬と猿を家来にしてきびだんごをあげ
鬼ヶ島で戦い鬼に勝ちました。
結 桃太郎の勝因は家来が個性を出して戦ったからです。
この簡単な取り組みでは子どもたちの数の分だけ文章ができるだろう。
その後このクラスでは「桃太郎問題しよう!」という声が増えた。
要約のための言葉の取捨選択をする壁を少しずつ乗り越えていったことだろう。
5年生で諦めるのは早い。苦手な文章作りに奮闘させたい。
授業は難しい。
先生がんばれ!
明日も元気で。