授業現場を散歩する。

対話する授業を求めて・・

小学校の先生に向け授業づくりのヒントを紹介します。


「『鳥獣戯画』を読む」国語6年 高畑勲の目の付け所。





授業TCは参考例です。実態やアイデアを加えオリジナルの授業を! 


高畑勲が「鳥獣戯画」の解説をしそれに対する評価を述べた説明的文章である。高畑勲といえば功績をあげればキリがない。登場人物の感情表現やうそのない生活感あふれる日常の描写、また背景と登場人物の一体化などに従来のアニメを超える繊細な表現に挑戦した人だ。本教材はいかにもアニメーションの監督らしい視点から、軽快なテンポで読み手をひきつける工夫がされた文章である。まるで高畑氏を目の前に置いて説明を受けているような臨場感がある文章だ。子どもたちに学ばせたいことは

  • 高畑勲は「鳥獣戯画」の絵のどこがいいといっているのか
  • 高畑勲が「鳥獣戯画」を人類の宝だと思っている根拠は何か?
  • 高畑勲はどのように工夫して読み手をひきつけさせようとしているか

・・である。それを学ぶには事実・感想・意見を区別して読まなければならない。

 単元計画

第1次で感想を書き今後の学習の見通しを持った。

第3次で実際に自分の選んだ絵の解説文を書く課題が控えていることを子どもたちにしっかり示し、この文章の良さと工夫を取り入れることを考えながら第2次の学習をすると伝えている。私たちも真似をして解説してみようということだ。

第2次は第1時でこの文章の要旨を捉える。

第2時で高畑が作品のどんなところにどのように目をつけているかを考える。

第3時ではなぜ人間の宝なのかを考える。

第4時ではなぜこの文章が説得力があるのかその構成や表現の工夫を考える。

第2次第2時の授業

第2時 高畑が作品のどんなところにどのように目をつけているかを考える授業を考察しよう

T: 今日は教科書の鳥獣戯画の絵をを拡大しました。高畑さんがいいと思った目の付け所を探ってみたいと思います。ペアで話し合ってみましょう

拡大版の鳥獣戯画の絵が貼り出された。先生が今日のめあてを掲示する。

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今日のめあて

高畑さんは鳥獣戯画の何に目をつけているのか考えよう

ペア交流後の交流

 

C: 墨一色だけど抑揚のある線と濃淡だけで伸び伸びとした見事な筆運び、その気品

筆運びって何?の声 先生が苦労しながら説明する。

T: そうほめているよね。これいったいどういうこと?

C: 普通絵本なら色がいっぱいついているけど鳥獣戯画は白黒だけど描いている線の太さに工夫がある

C: それと墨の濃淡があるっていってる

C: 伸び伸びした筆運びというのはさっとおしゃれに描いてる。

  おしゃれ? おしゃれだよ そうかなあ 線がおしゃれだよ・・の声

C: 迷わず描いてる

C: 気品があるの意味がわからないけど下品じゃないってことだと思います

子どもたちは絵を見入っている。

黒板に貼り出した絵の中に先生が書き込んでいく。

 おもしろいよな・・おもしろい・・の声

T: そういうところを見ている高畑さんってどう?

 すごい・・よく見てる・・普通は気づかない・・の声あり

T: 他にありますか?高畑さんが目をつけたいいところ・・

C: こんなに人間臭いのに何から何まで生き物のまま

C: ウサギは耳の先だけが黒い北国の野ウサギで、トノサマガエルも本物そっくりに観察してること

 北国のウサギってこんな感じなの?・・の声

C: 動物の骨格とか特徴をちゃんとその通りに描いていること

C: でも二本足だからそこは本物と違う

C: 大きさもありえないほどカエルがでかい

 ウサギがちっちゃいんじゃないの?・・笑い声。たしかに・・の声

C: その通りの現実の・・・形を描いていて、ただ大きさとか二本足とかを変えてるから人間くさいってことだと思います

C: 「さっきまで4本足で駆けたり跳びはねたりしていた本当の兎や蛙たちが今ひょいと立って遊び始めたのだとしか思えない」・・って高畑さんは思ってる

T: そこのところは高畑さんの何?

  感想・・思い・・意見・・の声

T: そうこういう事実だから自分にはこんなふうに思えたっていうことだよね。事実と重いとか感想とか意見とか分けて読んでいこうね。

C: 高畑さんは絵が上手だけど漫画見たいとも思っている。

T: では次に高畑さんのもう一つの目の付け所を探してみようか。漫画とアニメってどう違うの?これがヒントです。

C: アニメの原理といっしょで動きがある

C: 絵巻物だから次々に横に開いてお話ができているから

 絵巻物って知ってる?(先生) 知ってる・・の声

C: ・・ストーリーがある?

C: カエルの口から線が出ているのが言葉を出していると思っていてそこがアニメらしいと感じている

C: 絵に動きがある

C: 時間の流れ

C: ほんのちょっとした筆さばきだけで見事に表現している・・って書いてあるから・・・まわりの兎や蛙が目とか口が笑っているところなんかもちゃんと高畑さんは見ている。

T: そうだね。このまわりの動物たちの表現で何を表していると高畑さんは考えているかな。意見を述べているところがあるけどわかりますか?

C: 蛙と兎が仲良し

C: 対立や真剣勝負を描いているのではなく蛙のずるさをふくめあくまでも和気あいあいとした遊びだからにちがいない

C: 質問です。蛙のずるさってどういうことですか?

C: 相撲では噛んだら反則だから・・

 教科書の初めに反則技っって書いてある・・の声

C: この相撲は仲良く遊んでいるところだよって絵で表現していると高畑さんは考えた

C: それと、仲良しだけど動物一人一人がどう思っているのか絵でわかる

C: 表情豊か

グループ交流でふりかえり

T: では残りの時間でほんとにアニメになるか、よく絵を見て動物たちのセリフを考えてノートに書いてみようか。高畑さんもそれぞれが、どういう気分を表現しているのか、今度は君たちが考える番だ・・て書いているから高畑さんに乗っかってみよう。グループで話し合いながら書いてみよう。それを今日のふりかえりにします。

子どもたちはしばらくの間「鳥獣戯画」の絵の中の高畑氏の指摘していたことについて賑やかに交流していた。動作化したりこの絵を面白がったりして鳥獣戯画の魅力に目覚めたように笑い合っていた。蛙は歯がないのに噛み付いてるとか周りの動物たちの表情を指差して笑っている。みな笑顔の何分間かがあった。

授業の成果 

第2次は第1時から第3時までは次のようにどっぷりこの文章の読み取りをし、第4時は文章を客観的に見るという流れだ。

第1時でこの文章の要旨を捉える。

第2時で高畑が作品のどんなところにどのように目をつけているかを考える。

第3時ではなぜ人間の宝なのかを考える。

第4時ではなぜこの文章が説得力があるのかその構成や表現の工夫を考える

 やはりこの文章には力がある。子どもたちは集中して読み取ろうとしている。先生は「高畑さんは・・」を繰り返している。読み取りながらこの文章を意図して書いて高畑氏の意図をチラつかせ客観的な視点を持たせようとしている。取り上げた一文が事実なのか感想なのか意見なのか時々発問して確かめている。第4時の課題につなげさらに第3次に発展させることを強く意識している授業だ。目の前の鳥獣戯画は高畑氏の手によって子ども達の心にグイグイ入っていく様子が授業で見られた。鳥獣戯画そのものの魅力に誘導された子どもたちの様子を見て先生はとても変わったふりかえりをした。

T: では残りの時間でほんとにアニメになるか動物たちのセリフを考えてノートに書いてみようか。高畑さんもそれぞれが、どういう気分を表現しているのか、今度は君たちが考える番だ・・て書いているから高畑さんに乗っかってみよう。グループで話し合いながら書いてみよう。それを今日のふりかえりにします。

このあと13分程授業時間が残っていたが、大変な盛り上がりを見せた。グループでワイワイ言いながらノートに自分だけの脚本を作っている。少し話を盛っている子も見られたが。題名を作ったり動作化をしたりしている。

このように高畑氏の文章によって色々想像を膨らませた楽しい経験をさせてみて、そんな気にさせるようなとびきり魅力的な力のある解説文を自分も書いてみようとじわじわともっていくのが先生のねらいだ。単元で何を学ばせるかをはっきりと盛った授業だということがわかる。

 

授業は楽しい。先生がんばれ。

明日も元気で!