単元の最後第3次に椋鳩十の作品を読み味わう。その前にこの有名な文学作品をまず読み味わうという計画だ。登場人物の人物像や心情の変化を捉え、それをもとに作品から伝わるメッセージを捉えたい。中心人物大造じいさんの心情の変容(山場)を捉えさせる授業を見てみよう。
復習
T: このお話の大体のあらすじを復習しようと思います。教科書の挿絵を見て復習しよう。大造じいさんの気持ちが大きく変わったところはどこですか?
黒板に次の三枚の挿絵が貼られた。
1
- 大造じいさんががんをねらうところ
- はやぶさと残雪が戦うところ
- 飛び立つ残雪を大造じいさんが見守るところ
はやぶさと残雪がたたかうところ・・の声多数
T: この真ん中のところだね。ではその前はどのように思っていたの?
C: いまいましい
C: 絶対につかまえてやる
C: 大造じいさんはがんが取れなくなって困っていたのは残雪のせいだと思っていたから憎らしかった
C: 罠をしかけたりして絶対つかまえるともえてた
C: 失敗するたびに残雪を殺そうと思っていた
T: 大造じいさんのその気持ちは表情に表れているよね。そのことが書かれているところがありますか
C: けわしい顔とするどい目
T: それが第四場面ではどんな表情に変わってる?表情はどうだっって書いてある?
笑っている・・すがすがしい・・の声
C: 晴々とした顔つきで見守っている
T: そう。(挿絵を指して)この時の大造じいさんの気持ちが表れている書き方はありますか?
C: 「また堂々と戦おうじゃないか」
C: 逃す時のおりのふたをいっぱいに開けてやった
C: 北へ北へってところがずっと笑ってまた会おうなーっていう感じでずっと見ている感じが出てる。
T: 初めとはずいぶん違うね。何があったかというとこの真ん中の場面だよね。この大事な場面のこと「なんとか場(〇〇場)」っていうんだけど知ってますか?
C: クライマックスの場
C: 山場
一人学び(10分)
T: そうね。山場・・クライマックス・・お話の中では一番盛り上がるところだね。今日のめあては
板書
大造じいさんの心情が大きく変わったところとその理由を考えよう
です。 ノートに自分の考えを書いてまとめましょう。
子どもたちは自由に表現することになっている。
心が動いたことをまずランダムに書いていく子
箇条書きでまとめながら記す子
絵を書く子
登場人物にお手紙でもいいことになっている
そして時間ぎれ1分前に先生から「まとめてください」と声がかかると
最も強い自分の気持ちのところに赤を入れ交流の準備をする。何が自分に響いているかを認識させる。
グループ交流(10分)から
T: 今からグループで交流します。先生からはこんなことをききたいです。
「大造じいさんは本当にそんなことで心が動いたのだろうか?」
この質問に根拠はどこなのかを考えなが話し合ってください。
この先生の質問が出た時に子どもたちは少しどよめいた。
自分のノートを見ながら自由の話し合っている。
その後グループ交流で練られた個人の考えを発表する。
出てきた考えは次のようなものだった。
C: 「大造じいさんはぐっと銃を肩に当て残雪をねらった。がなんと思っ たか再び銃をおろしてしまった」・・だからあんなに憎らしかったのにやめたのは残雪が仲間を救おうと必死になっていたからその姿を見て変わった。
C: ただの鳥じゃなくこいつすごいやつだと残雪のすごいところを見て変わった。
T: どこからわかりますか?
C: 大造じいさんは強く心を打たれてただの鳥に対しているような気がし なかった」・・のところ
C: 同じです。鳥だけど尊敬するような気持ち。初めは「ただの鳥」と思っていたから
C: それまでも頭がいいことはわかっていたけどそれだけじゃなくて行動が立派なところを見つけた。
C: おとりのがんは大造じいさんがてなづけてるから大造じいさん側なのにがんだから仲間だから助けているところ
T: どの文からわかる?
C: 「大造じいさんを正面からにらみつける頭領らしい堂々とした姿 」・・というところで完全に残雪に対する気持ちが変わったと思います。想像しただけですごく怖いぐらいだから圧倒された。
C: 「また堂々と戦おうじゃないか」っていうところでおじいさんにはまだ捕まえたい気持ちがある。でも「堂々と」って言ってるから・・ひきょうなまねはしないと言っているから・・おじいさんもちょっと残雪の影響を受けた。
C: はやぶさはするどい爪を持っているのに、がんは水かきを持っているただの水鳥だから圧倒的に弱いからすごい勇気がいるから
T: よく知ってるね。
C: 調べました。たたかいは相当残雪には不利だったのにいったから
T: 情景描写でも根拠がありませんか?
C: 「羽が白い花弁のようにすんだ空に飛び散った」のところでいっぱい羽が抜けている様子がわかるから残雪が必死なのがわかる
C: 「くれない」・・
T: 血の色だよね。かっこいいよね表現が。
C: おじいさんにはくれないに見えた
T: なるほどね。みんな山場・・クライマックスの場面をよく考えたと思います。ふりかえりをノートにまとめましょう。
先ほど自由に書いたノートの下に箇条書きで友達の意見や板書を自分なりの方法でまとめていた。
【授業の成果】
子どもたちの「一人学び」とされているノートダイナミックだった。グループ交流でもなかなか意見を言わない子が多いことで先生が考えた方法だが、文が苦手な子が絵を書いているのを見せるだけでグループ交流で話題になって救われていた。
またはやぶさとがんのことを調べている子もいたが前時の「一人学び」の時に家で調べたメモを写していたという。
グループ交流の時の先生の質問
「大造じいさんは本当にそんなことで心が動いたのだろうか?」
は効果的なゆさぶりだった。一応の解釈が終わっているのにまだあるのかという雰囲気が流れたが、いかに無謀な戦いに挑んでいるかを進めることができたのもこの発問の効果だと思う。
授業は難しい。
先生がんばれ!
明日も元気で。