授業現場を散歩する。

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小学校の先生に向け授業づくりのヒントを紹介します。


「ブラッドレーのせいきゅう書」道徳4年 あたりまえのことへの配慮


スタディサプリENGLISH(新日常英会話コース)


授業TCは参考例です。実態やアイデアを加えオリジナルの授業を! 


道徳教材の中には取り扱いに配慮の必要なものがある。「おかあさんのせいきゅう書」あるいは「ブラットレーのせいきゅう書」はそのひとつ。家族に対する考え方、家事やお金の扱いと関係する内容の場合、様々な境遇の子どもたちがいるのでどのように進めたらいいのか、どこまで踏み込んだらいいのかが難しい。家族についての授業TCを見てみよう。

 あらすじ

ある日曜の朝、ブラッドレーは食卓におかあさんあてに1枚の請求書を置く。内容は、

お使い代100円 お掃除代200円 お留守番代200円 計500円 

と書いてある。お母さんははじめ不思議そうにしていたが、やがてやさしい顔でそれを繰り返し読みにっこり笑った。お昼ご飯の時500円をもらったブラッドレーはうれしくなるが同時に今度はおかあさんからの請求書が置いてあった。内容は

親切にしてあげた代0円 病気の時の看病代0円 洋服やくつやおもちゃ代0円 食事代と部屋代0円 合計0円

ブラッドレー何度も読み返し次第に涙で字がかすんできた。

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配慮を要する点は何か

今を生きる子どもたちを取り巻く状況はひと世代前と大きく変わっている。

ひとり親世帯で、母親が働いて帰り早くなく子が家事をするのがあたりまえになっている子もいる場合もある。この話のたかしのようにお小遣いをもらう以前の日々を送っている子もいることを念頭に入れなければならない。40人の子には40通りの家庭がある。家族を話題にする場合は子どもたちの共通部分は何かを考えておく必要がある。その共通部分は子どもたちには保護者がいてその大人のもとに保護されて生きていることだ。

導入

T: みんなはお小遣いをもらっている人いるの?

パラパラと挙手あり。

T: もし500円をもらったら何に使う?

C: お菓子やドリンクを買う

C: 漫画を買う

C: 雑誌を買う

C: ペンとか小物を買いたい

T: 先生は500円もらったらアイスを買って食べます

おんなじーの声。皆嬉しそうだ。

T: 今日のお話に500円がでてきます。ちょっとシビアだよ。読みますね。

先生は読み終えた後で2度の黙読を指示した。

T: ブラッドレーは4年生だとして、その保護者・・この場合はおかあさんだね。・・との請求書のやりとりをした話です。それでいいですか?

C・・・

T: 何か感じたことありますか?

C: ブラッドレーは自分のことしか考えてない

C: ブラッドレーやったことは恥ずかしい

C: おかあさん・・してやったなーって感じ

少し笑い声が起きる。

C: おかあさんはやさしい。

C: おとなしいお母さんだなと思う。

T: おとなしい?

C: 普通は・・っていうかうちなら・・何言ってんのよーとか言って、ふざけんなーとか言って怒られる。

笑い声に溢れる。こんなはずはないな・・の声

T: そうかあ。このさあ、保護者からの請求書はなんで0円なの?

C: 親は世話することが普通であたりまえだから

C: 子どもはまだ子どもだからお金がないから

C: 親は働いていてお金があるから子どもからは貰えないしもらったとしてもそれはもともと親のお金だから

T: では保護者が自分に何かしてくれることはあたりまえ?

C・・・・

T: どうなんだろうね。保護者がしてくれていることは0円で当然だと思うかを考えようか。グループになってこのこと話し合ってみてね。

今日のめあて

保護者が0円で自分にしてくれることはあたりまえのことか?

グループ交流

ここまでの子どもたちの感想はどこかさめていて思ったよりサバサバしているように見える。子どもたちは交流しながら友だちのいいと思った考えや疑問や迷いをノートに書いていた。初めは一人ずつ順番に考えを伝えそのあとはメモを取りながらフリートークをしている。

全体交流

T: 活発に話し合っていたね。保護者が0円で自分にしてくれることはあたりまえだということになった班はどのくらいある?

半分ぐらいの人数が挙手している。

T: では詳しく話し合ったことを聞かせてくれるかな

C: 法律上は当然だけど自分がしっかりすれば少しは楽になるかなと思う。

C: この請求書で、やさしくした代って書いてあるけどそれでお金取るのも変だと思うからそれは当たり前で、看病もあたり前で・・全部当たり前なんだけど、そう言い切ったらダメな感じがする。

C: 私たちの班は虐待する親もいるという話になりました。当たり前のことができなくて逆に虐待とかして捕まったりするから。・・それは義務だから。

T: 最近こわい事件あるよね。そんなことまで話したのね。

C: 虐待とかは別として大体は一生懸命働いてくれているから手伝わないといけないと思いました。

C: 家事って結構大変だと思います。おかあさんはいつも忙しそうにしているし疲れたとかよく言っているから。

T: 保護者はみんなのためにいつも忙しそうだよね。保護者ってなぜそんなに色々できるのかと不思議に思います。・・・・・・他にはないですか?

C: 私は病気になった時はすぐにお医者さんに連れてってくれるけどおかあさんは頭が痛い時でもあんまり病院に行かないで我慢してるなと気付きました。

C: 保護者の保護者がいないっていうこと。

C: 今まで考えてなかったけどみんなの話を聞いてたら大変だってわかりました。

C: お風呂を洗ったり洗い物をやったりするけどご飯は作れない。

C: 僕の班ではブラッドレーにお手伝いでお金取るのはお手伝いじゃないという意見が出ました。でもお手伝いでお金をもらっている人もいました。

T: そうなんた。これをもらわなくなると大人に近づくんじゃないの?

C: でもブラッドレーみたいに請求しているんじゃなくてたまにご褒美でもらっている。

C: 大人はお仕事ではお金が入るけど、お掃除とかはお金は入らないから自分の部屋とかできることはするほうがいい。

C: このおかあさんはもっとブラッドレーにちゃんと言ったほうがいいという意見が出ました。ちょっと優しすぎるから。

C: お金はもらわないって決める。もらうのは子どもっぽい。

でもお金もらったら嬉しいよ・・の声。笑い声あり。

まとめ

T: さっき500円の話したら嬉しそうだったよ。みんな。

口々に何か言いながら恥ずかしそうに笑っている。

T: いい時間だったね。あたりまえのことだけど、大変な思いをしているあなた方の保護者のことを、今日みたいに思ってあげることは大事かもしれないね。・・でもこれがすっかり忘れちゃうから・・忘れないように今の気持ちをノートに書いておきましょう。宛名は 〇〇様へ。〇〇のことろにあなたの保護者の名前を書くんだよ。

【授業の成果】

先生は一度も「おかあさん」とか「おとうさん」とかという呼び方はせず「保護者」という言い方で統一した。それがこの教材の持つちょっとした違和感をカバーしている。

お互いの家の事情をよく知っている子ども達は「保護者」という言葉で少し交流がしやすかったかもしれない。しかし子どもたちからは「おかあさん」が多く出てきた。教材中のブラッドレーの母に対してはちょっとした批判も出た。今や家族は支え合いの同志なのだと子ども達を頼もしく思った。子どもの中には父は仕事、母は家事という固定観念を持っている子もいた。親が子を無償で世話をするのはあたりまえだと強く思っている子もいる。しかし本時のような視点から家族を話題にすることで今まで気づかなかった部分に思いを持つことができた子もいたようだ。

先生のこの発言はそういう意味で効果的だった。

T: そうなんた。これを(お小遣いのご褒美のお金を)もらわなくなると大人に近づくんじゃないの?

この何気ない言葉は、お手伝いを報酬なく日々あたりまえに行っている子が胸を張れる。

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