「二わのことり」は資料が教科書会社によって少し異なっている。「みそさざい」を「すずめ」に変えている場合もある。ここで繰り広げられる小鳥たちの物語を通して「友だちを思いやる気持ち」をどのように受け取らせるか、まだ幼い1年生に議論させようとした授業を考察しよう。
あらすじ
遠くて寂しいところに住んでいるやまがらから、山の小鳥たちのもとへ誕生会の招待状が届くが、この日はうぐいすのいえで音楽会の練習がある日。ことりたちはみな近くて明るくてごちそうがあるうぐいすの家に行く。迷っていたみそさざいもうぐいすの家に行くが、1人でいるやまがらのことが頭から離れない。とうとうこっそり抜け出しやまがらの家に行くと、やまがらはとても喜び、みそさざいは来てよかったと思う。
導入
うぐいす・みそさざい・やまがらの絵が名前入りで黒板に貼られた。
T: 今日はこの鳥さんたちが登場するお話をもとに勉強します。みんなは友だちと普段とどうなふうに過ごしていますか?
C: 学校から帰ったらお家に行ってゲームします。
C: 公園で待ち合わせをして鬼ごっことかをします。
C: おかあさん同士がおしゃべりする時について行っておうちで遊びます
C: おやすみの日に一緒にお出かけします。
T: お友だちっていいね!
いいー!の声
T: お友だちっていいなって思う?
いい。・・さっきより少し声が少ない。
展開前段の中心発問
教材文をゆっくり読む。
T: やまがらさんは誕生日に招待しても誰も来なかったね。誰もお祝いにこなかったらどんな気持ちになるかな?
悲しい・・
泣いちゃう・・の声
T: でも・・みそさざいさんがお祝いに来てくれた時はどうだった?
やったあって・・うれしい・・の声
C: 来てくれたんだーって喜ぶ。
T: そうだね。みそさざいさんはどうしてきたのかな?今日はそれを考えて欲しいです。
板書
きょうのめあて
みそさざいさんはどうしてやまがらさんのうちにきたのかな?
ワークシートには吹き出しが書いてある。
T: みそさざいさんがうぐいすさんのところからこっそり抜け出してやまがらさんの家に来た時どんなお話をしたか書いてみましょう。
T: みそさざいさんはどうしてやまがらさんのところへ来たのかな?
C: やまがらさんが一人ぼっちで・・誕生日なのにかわいそうだなと思った。
C: お友だちだし、せっかく招待状までくれたのでお祝いを言いたかった。
C: 今ごろ悲しい気持ちになってるだろうなーって思った。
C: うぐいすさんのとこに行ったら、気になりすぎて嫌な気持ちになった。
C: 泣いてるかもしれないなーって思ったから。
C: うぐいすさんのとこへ行ったことを後悔した。
展開後段 議論へ
T: さっきのワークシート中に、こんなことを書いてくれた人がいます。
- やまがらさんお誕生日なのにおくれてごめんね。
- やっぱり急いできたよ。
- これからも仲良くしてね。
- これからもやまがらさんと仲良くするよ
- ごめんね。まよわないでやまがらさんのとこに来たらよかったよ。
T: ここでみんなに考えて欲しいことがあります。この日は2つの出来事が重なってしまったんだよね。音楽会の練習とやまがらさんの誕生日。みそさざいさんは初めはうぐいすさんの音楽会の練習に行きました。それで小鳥たちはみんな招待状をもらっているのに1人も誕生会には行かなかったんだよね。みそさざいさんは音楽会の練習に行ったの。みんなだったらこんな時どうする?
先生はもう一度資料を読む。
みそさざいさんはやまがらさんが気になってしかたなくって今までみんなと練習をしてたのにこっそり抜け出したの。こっそりだよ。そしてやまがらさんのところへいきました。やまがらさんはとても喜んでくれたからよかったんだけど。・・だけど気になることはありませんか?
ペアで話し合ってみてください。
ペア交流 7分 盛り上がっている。
しばらくすると、子どもたちが発言したそうに、もぞもぞし出した。
C: みそさざいさんはやまがらさんのことが気になって、だから行って・・お誕生会できたけど・・ほんとは小鳥さんみんなもいったらよかった。
C: 僕も2人だけの誕生日はちょっと寂しいから練習を早く終わってみんなで行けばよかったと思います。
T: そうか。でもみそさざいさんは言えなかったんだよね。
C: こっそりぬけだしたから・・音楽会の練習がほんとは大事だった。
本番が近いかも・・の声
C: うぐいすさんの練習は練習でも楽しそうに見える
T: ついついいっちゃうよね。
C: ちゃんと「僕はやまがらさんが気になるから行くね」って言えばよかったと思います。そしたら僕も行くって言う小鳥さんがいたかもしれないから。
C: うぐいすさんのおうちにはごちそうがあるし、やまがらさんのおうちは遠いところにあるから・・行きたくないから・・みんなうぐいすさんちにいる。
C: こっそりぬけだしたら、みそさざいさんいないから、大騒ぎになるから
T: ちゃんと言わないとみんなが困るかあ・・
C: 音楽会の練習と誕生日会が重なってたら、初めにやまがらさんも誘って一緒に音楽会の練習をしてその後でやまがらさんの誕生日をみんなですればいいと思います。
T: 両方うまく行くようにするって言う人もいるんだね。
C: でもみそさざいさんは、ぬけだしたらいけないし、うぐいすさんに悪いけどやまがらさんは一人ぼっちでないてるかもしれないから行ったと思います。
T: 一人ぼっちは寂しいかあ・・みんなとってもよく考えてくれたね。時間が来たのでふりかえりマークをつけてね。
ふりかえりは文章ではなくて次のマークをノートに書くことになっているそうだ。
いっぱいお話しできた 少しお話しした
↓ ↓
【授業の考察】
1年生にとって「友だち」=「遊び友だち」。助け合う仲間としてとらえるのはまだ先のことだろう。
遊ぶ日が別の友達と重なってしまうことはよくあること。例えば習い事と遊ぶ日が重なる等よくある。日が重ならないよう前もって親が手を打つのが一般的だ。揉め事があったときは親が助言しながら友達との関係が崩れないよう支えていくことが多い。
小学校生活が進むにつれて友だち関係を自分で決める場に直面する。考えて行動することがまだ難しい時期なので小さなトラブルは多いはずだからそう言う意味でも本授業の議論はドンピシャな内容かもしれない。
ワークシートではやまがらとみそさざいのどちらから先に書いているのか、子どもによって様々だった。
悲しかったやまがらに寄り添った子は喜びを書いている。
一方迷って駆けつけたみそさざいの気持ちを先に書いた子は鉛筆があまり進まない。
こちらの方が難しいようだ。なぜか?
みそさざいに葛藤があったからだと子どもたちは気づいているからか。やまがらの喜びを書いた子も、次にみそさざいの欄に移っているがやはりなかなかペンが進まない。
前半まであまり詳しく気持ちをおさえて来なかったので、ここで初めてみそさざいのことをじっくり考える時間となった。これが後段に議論を呼ぶことになる。
展開後段の問い返しが小さな議論を読んで効果的だ。小鳥たちの行動を通して現実の自分たちのよりよい行動について議論している。先生は次のポイントをもとに誘導している。
- 2つの場はどっちに行くのが得か損かみたいなニュアンスがある。ごちそう・明るい・近いなど
- 音楽会の練習と誕生日会の意味合いは違う
- みそさざいはこっそりぬけだしてる
そして自由に議論させ、発言の後には先生はその子を考えを「その考えもわかる!」と受け入れる姿勢を示した。 1年生でも今はそう言う場に直面することが多いのだなと実感するほど議論は面白かった。
子どもたちには1つの価値だけで世の中は成り立ってないこと、多面的にとらえることの大事さを学ばせ、その上で自分らしいよりよい生き方をあゆませたい。