この単元は、直方体・立方体から直線や平面の平行及び垂直の関係について理解できるようにするとともに、図形を観察したり、構成したり、分解したりする活動を通して図形についての見方や考え方を持つことをねらいとしている。
既習事項は2年生で身の回りにある箱の形について学習している。箱には6つの面があり長方形や正方形の形になっていることや、頂点や辺の数についても学習済みだが、立方体・直方体という用語は本単元が最初である。
単元の導入の授業を見てみよう。
既習事項の復習
T: 今日から新しいところに入ります。まず2年生の復習からね。みんなの生活の中に色々な箱があります。この箱に注目してみよう。箱には何がある?
C: 直角
C: 長さ
T: なんの長さ?
C: 辺
T: 辺って何だっけ。前に出てきて教えて?
C: (前に出て指差す)ここの線のとこ
T: そうですね。他にある?
C: 頂点
T: 前に出てきて教えて?
C: ここの触ったら痛いところ
T: 2年で勉強したね。他には?
C: 面がある
T: そうね。この平らなところが面、ここが頂点、ここが辺、この辺とこの辺で作られている角が直角だね。
ブラックボックスC1
T: ここに箱があります。名付けてブラックボックス。ここに手を入れる穴が開いていて中に箱が入っています。その箱を触って・・見てはダメですよ。箱を触ったら「この中に入っているのはこんな形です。」とみんなに少し説明してください。そのあとみんなから質問を受け付けます。最後にみんなが答えを見つけるというゲームです。
楽しそう!という声。
T: ここでときに質問や説明するときのポイントは次の通りです。
先生は画用紙を提示する。
頂点の数
辺の数
面の数
面の形
T: この4つがさっき復習で出ていたことです。これを使ってもいいですし、他のことでもいいです。
次に先生はテレビに映像を映し出す。そこには子ども達に馴染みのお菓子や日用品の箱の写真が並んでいた。
多くの挙手があり、1人がボックスの前に立った。
C1: 頂点の数は0個です・
えーの声
C: 面の数は何枚ですか
C1: えーっと・・・??わかんない・・・・・あ・・3枚かな??
3枚??・・・・しばらく沈黙
ざわざわする
そんなのある??の声
C1 もう一度言います。頂点はないです!!
C: わかりました。き だと思います。
C1はあたり!と言って嬉しそうに円柱の箱を出した。
拍手が起こる
先生は き の円柱が3つの面だったことを説明した。
ブラックボックスC2
C2: 頂点は8です
C: 辺の数は何本ですか?
C2: ・・・・たぶん・・・8・・
C: 面の数はいくつですか?
C2: ・・・・6です
C: 面の形は?
C2: ・・・多分正方形です
ここで発言が止まった。立方体は2つある。(赤色の立体)
T: なぜ答えを迷ってるの?
C: 答えが2つあるから決められない
C: どのくらいの大きさかがわかれば当てられる
C: C2さんはボックスの中を見てはいけないから、誰かに大きさを聞かれても答えられないから・・
T: つまり似ている箱・・仲間の箱があるってことだね。
あるある・・の声
C: い か く です。
C2は半分正解!と言って い の箱を取り出して見せた。
拍手
T: い と く は仲間だと言えるね。ではこの9つの箱は何個かのグループに仲間分けすることができるってこと?
できる!の声
首を傾げる子もいる。
見通しの交流
T: 今日のめあては仲間分けです。
板書
今日めあて
「箱の形をなかま分けしよう」
T: どんな分け方がいいかな。
C: 箱の形で分ける
C: 箱の色とかではなくて算数的な仲間分けがいい
C: 大きさ?
T: 形、大きさが出たけど算数的な仲間分けって面白い言い方だね。どんなことかな?
C: 色だったら茶色系とか赤系とか分けることができるけど・・・中に入っているものとかでもなくて・・形・・
C: フォルム
C: たとえばだけど四角くないものは・・う か き だからまずはそれを分ける。
C: さっきの い く は仲間だったからそれ以外と分ける
T: う か きには四角形ではないところがあるってことだね。それは、頂点 面 辺のどのパーツを見てるの?
C: 直角
C: 面
T: いいね。それでは各自仲間分けをしてみよう。仲間分けの理由を必ず書いてね。
この9個の立体の写真入りのワークシートが配られた。
自力解決
ワークシートに書き込まれた仲間分けの理由には次のようなものがあった。構成要素に着目して図形の特徴を見つけ出そうとしている。仲間分けが難しそうな子には「面の形を見て色分けしてごらん」と下のようなヒントカードを渡している。
- 正方形だけのきれいな形の箱(い く)特別な形(う か き)
- 全部の箱には四角形の面がある。
- 面の形が四角以外(う か き)面の形が四角(あ い え お く)
- 正方形(い く)正方形と長方形が混ざってる(お)正方形がない(あ え)
- 面の形で分ける。全部長方形 全部正方形 1つだけ正方形 それ以外
- 頂点の数 8個 (あ い え お く け) それ以外(う か き)
グループ交流
T: 途中の人もいると思うけどグループで友だちの分け方を聞いてみよう。同じ考えや違った考えが見つかるかもしれないよ。
先生はこのグループ交流では席を立ち、教卓に並べられた9つの立体を自由に眺めたり触ったりしてもいいことにした。
1つの分け方に決めるのではなく各自の考え方を紹介しあっていた。
- 頂点の数を数えた みんなで数えよう 8 6 0 12 ・・8が多いな
- 辺な長さはバラバラだね
- (か)は三角形と長方形の面でできてる。(き)は円と長方形でできてる (う)は六角形と長方形。この3つはアンチ四角形のくくりで仲間にしたらいい。
- (い く)は全部の面が全く同じだから、他と比べて特別だから、この2つだけにした。
- (お)は正方形と長方形の合成・・・どっちに入れるか迷う。
- (お)の小さい面が、正方形か計ってみたらたてと横が2ミリ違ってた。正確には正方形じゃないよ。
- (き)は筒みたいに丸っぽいのは特別な感じ。転がっちゃう。あとの形は転がらない。だからまずこれだけ一人ぼっちにする。
先生はグループ交流をしばらくしたあとは、あえて集団解決の時間は設けなかった。
新しい用語とまとめ
T: 色々な分け方があっていいと思います。最後にみんなに新しい算数用語を覚えて欲しいと思います。
板書
長方形だけで囲まれた形を「直方体」という。
正方形だけで囲まれた形は「立方体」という。
T: このように(あ え お け)には直方体という名前がついています。
また(い く)には立方体という特別な名前がつけられています。
これを覚えながらノートにまとめましょう。
【授業の成果】
先生には2年生の形の勉強の定着があまりできてなさそうだという前提があった。そのため、構成要素の用語の確認とブラックボックスのゲームで時間をかけて既習事項の復習をした。
授業は仲間分けをする過程で、立体への興味づけをすることと新しい用語と出会わせることが目的である。直方体、立方体以外の立体について調べることでより理解が進んだようである。
またブラックボックスは手触りで立体を理解するというワクワクする面白さがあった。特に最初に円柱を選択し、C1に探らせた場面は「頂点」という構成要素をインプットさせるのに効果的で、以後の思考展開や交流に影響を与えている。
C2の立方体を探らせた場面では2つの大きさの異なる立方体をピックアップさせて個々の自力解決の思考を助けることにもなっていた。この手触り感で構成要素を想起させる方法で焦点化できたと言えるだろう。
さらにグループ交流で実際に立体に触らせたり近くで立体を眺めたりできたことにも先生の「手触り」に対するこだわりが感じられた。
このゲームから今日のめあてに落とし込む方法も次のように自然にできていた。
T: い と く は仲間だと言えるね。ではこの9つの箱は何個かのグループに仲間分けすることができるってこと?
できる!の声
また箱の全体の形 に流れがちな子どもたちを戻す次の補助発問も良かった。
T: う か きには四角形ではないところがあるってことだね。それは、頂点 面 辺のどのパーツを見てるの?
C: 直角
C: 面
集団解決で仲間分けの方法をすべてあげさせると何通りも出てくることがわかった先生は、あっさり仲間分けの共有をすることをやめたがこの判断は正しい。先ほども述べたとおり、立体への興味づけをすることと新しい用語と出会わせることが授業の目的であるからだ。
ふりかえりには「他の箱の特別ネームを知りたい」と書いている子が何人かいた。
授業は難しい。
先生がんばれ!
明日も元気で。