体積も長さと同じように基準の大きさの量として普遍単位を用いる。
この必要性に気付かせ単位の意味について考えさせる。
ここでは次のことが大切だとされている。
量感を養うこと。
見当をつけること。
正確な測定をすること。
適当な「ます」と単位を選択すること。
普遍単位 L dL mLの有用性に気付かせること。
量感を養い「ます」の必要性を実感させるために思い切って大胆に体験の場を設けた先生の授業に出会った。授業のTCを考察しよう。
先生の繊細な準備が見られたところには★を付けてみたので参考にしてほしい。
準備
ねらい
コップいくつ分で比較する学習を通して「かさ」の量感を高め「ます」を使ってきちんと調べる必要に迫られ、「ます」(普遍単位)が必要であることを理解させる。
2年生の子どもたちにとっては新しい算数学習のステージに登る重要な場面である。
2L前後の容量の水筒・容器等8つ。を用意する。★
実際のものとは違うがこのようなイメージで教卓に8つの入れ物が並べられる。
見通し
T: ここに1から8というカードをはった8つの水やお茶を入れる入れ物があります。8番はペットボトルです。すべて水が満タンに入っています。今日はみんなで協力して一番多く水が入る入れ物を見つけたいと思います。何番の入れ物が一番多く入りそうですか?グループで予想をしてみよう。
数分話し合った後の結果は次の通りである。
C: 7
C: 1か2
C: 3か8
C: 1
C: 2か7
C: 3か8
C: 2
C: 8
T: どの班の予想も似ているようでなんとなく違いますね。
生活班8班にこの容器のうち1つを配りますから正確に水の量を測ってくらべたいと思います。さあどのようにはかったらうまく8つをくらべられますか?
C: バケツに入れ物の水を全部入れてマジックでしるしをつける。8個それをする。
C: バケツが透明じゃないからしるしがくらべられない。
T: 別の方法はありませんか?
C: コップで何杯分かをはかってくらべる。
C: コップがたくさんいる。
C: 班1個のコップではかった水はバケツに捨てる。何杯分か数える。
紙コップ大 小を見せる。★
T: いい考えですね。ここに大小の2種類の紙コップがあります。これではかることにしましょう。この紙コップ各班に大小適当に配っていいですか?
C: みんなに配るのは同じ大きさの紙コップでないとダメ。
T: なるほど!同じ大きさじゃないとくらべられないということでいいですか?
では大小どの大きさにしますか?
C: 大きい方が入れやすい。
C: 小さいほうがいい。
C: ぴったり「なんはい」とならないから小さい方がいい。
C: 小さい方でもピッタリならない。
C: 大きい方が早く結果がわかる。
このあと多数決で大きい方のコップではかることになった。もちろん小さい紙コップははかる回数が増え誤差や失敗が起きやすくなる。しかしあえてこの2択を考えさせ適当な「ます」を選択させる。
紙コップ大は432ml
紙コップ小は210ml
のものである。
C: 同じ大きいコップでも どこまで入れるか揃えないと ダメだと思います。
するどい発言が一人から飛び出す。
T: なるほど!では先生が8班分大コップに同じ高さの線を入れますので見ていてください。
(8班の紙コップ(大)の全てを8分目ほどのところに線を入れて全員に示す。)
実は紙コップ大の400mlのラインに前もって先生が印をつけている。だから時間は短時間でこの印をつけることができる。★
T: 各班ここまで水を入れてはかっていきましょう。なるべくこぼさないように正確にはかることが大事です。
C: こぼしてしまったらどうするんですか?
T: こぼしたら初めからやり直します。水を満タンに入れて1杯目からやり直します。では始めましょう。
(各班に 雑巾 入れ物1つ バケツ ホワイトボードを配布)★
ここで本時のめあてを板書する。
めあて
「8つの入れ物の水のりょうをくらべよう」
ここからで子どもたちの活動が始まる。注意深くひとりがコップを持ちおそるおそる一杯ずつはかる。
種明かし
第1位 2.2Lの水筒
第2位 2L ペットボトル
2.L 水筒
2.L 水筒
第3位 1.8L 水筒
1.8L 水筒
1.8L 冷水筒
第4位 1.1L 花瓶
紙コップ(大)の線を入れたところは400ml だから第1位の2.2Lは6杯目に突入するがそれ以外は5杯ピッタリか4杯半ということになる。前もってとてもわかりやすい結果を設定しているといえる。★
活動の様子と結果
1班 2Lと2Lの入れ物をはかる だいたい同じ量でした。
2班 2Lと1.8Lの入れ物をはかる こっちの方が多く入る。
3班 2Lと2.2Lと1.8Lの入れ物をはかる 一番はこれだ。
4班 1.8Lと1.1Lの入れ物をはかる これが一番入らないかも
5班 2Lと2.2Lと1.8Lの入れ物をはかる 一番がわかった!
6班 2.2の入れ物を2回はかる 6杯目に突入!5杯とちょっと。
7班 1.8Lと1.8Lの入れ物をはかる だいたい同じでした。
8班 2Lと2Lの入れ物をはかる だいたい同じ量
先生は入れ物に番号をつけ、みんなが測ったデータを板書していく。予想通りだったこと予想が外れた子とで大賑わいになったが・・・
最後は静かに満足そうに結果をノートに書き留めている。
【授業の成果】
このような授業は冒険である。入れ物の水筒の大きさが見るからに結果がわかるものだと子どもたちは小さい水筒をはかる意味がないと意欲が下がる。そういう意味で8つの入れ物は(集めるのは大変だっただろうが)いいあんばいの入れ物だった。
またまだ2年生なので、紙コップの大きさによっては誤差が生じやすくなり数え間違いで揉め事が起こったり思わぬ失敗でわけがわからなくなってしまう。
この日の授業の結果は班によっては思わぬ誤差が生じていた。こぼしてやり直した班が2つあったが、前もってその場合の指示を与えていたので失敗に落ち込むことなかった。先生の魔法のような言葉・・
T: やり直せば大丈夫だよ!
この明るい声で、元気が出て活動が再開した。
先生が時間をかけてこの計画を練ったに違いない。それがじわじわ伝わる授業だった。
先生のねらっていることもグループで交流しながら学習する場が作れていた。
量感を養うこと。
見当をつけること。
正確な測定をすること。
適当な「ます」と単位を選択すること。
第1位の入れ物を見つけることではなくてそこにいくまでの過程にねらいがある。各グループ協力して結果を出すことができ満足した顔でチャイムと同時に授業を終えた。休み時間、第1位を獲得した水筒の周りにかけよって触ったり眺めたりしていた。また他の入れ物についても中を見たりして触っていたのが印象的だった。
体験させることで多くを学べる。思い切って大胆に挑戦させ周到な準備をし結果がシンプルに出るように計画した授業で子どもたちに水の量感を感じることができた。
授業は難しい。
先生がんばれ!
明日も元気で。